WCAG 3.0とEAA、ふたつの動きを読んで、あらためて気になったこと

2025年6月、欧州アクセシビリティ法(EAA)が施行され、その後、2026年3月に WCAG 3.0の Working Draft が更新されました。
ふたつの動きが重なるタイミングで、あらためて気になったことがあります。それは、実装の話でも、技術基準の細部の話でもなく、定着の話です。
WCAG 3.0が向いている方向
WCAG 3.0は、初期の段階から一貫して、評価のアプローチを「実装がどうなっているか」よりも「ユーザーにとってどのような体験が実現されているか」に重きを置いています。
具体的には、成果(outcome)を起点にする、という姿勢がそれに当たります。
もう少し具体例にしてみると、WCAG 2.xでは、「代替テキストがあるか」「コントラスト比が4.5:1以上か」のように、実装の条件を満たしているかどうかを問うことが中心にあったと思います。
それに対してWCAG 3.0では、「代替テキストがあるか」という条件の確認から、「非テキストコンテンツの目的がユーザーに伝わっているか」という体験の確認へと問いが変わります。
コントラストについても、数値の閾値を満たすかどうかだけでなく、実際に読みやすいかどうかという定性的な観点が加わってきます。
具体的なテストのサンプルは、W3C が公開している「6. Testing」の中で確認できます。
参考 URL: https://www.w3.org/TR/wcag-3.0-explainer/#testing
なお、WCAG 3.0はWCAG 2.xの後継にあたりますが、ドラフト段階では「WCAG 2の廃止は行わない」と明記されています。WCAG 3.0が完成した後も、少なくとも数年間はWCAG 2.xが廃止されることはないとも書かれており、法規制や調達基準は当面WCAG 2.xベースが続くだろうと思います。
EAAが問うている範囲
EAA は、2025年6月28日に施行された European Accessibility Act の略称です。
内容は、プロダクトやサービスそのものの品質だけを問うものではありません。それがどのように提供され、運用され、維持されているかという側面まで、責任の範囲に含まれています。
今年3月、EAA の施行後の動向を扱った海外のウェビナー( EAA in Action: Post-Enforcement Insights & Next Steps)で聞いた話では、現時点では即時の罰金よりも警告や是正要求が中心とのことでした。ただ、EAAの本質は「実効性のある持続的なアクセシビリティ」であり、チェックリスト的な対応に留まらず、プロダクト開発のライフサイクルにアクセシビリティを組み込むことを求めている、という点は印象に残っています。
日本で仕事をしていると現地の温度感は掴みにくいですが、「作って終わり」ではなく「運用まで含めて設計する」という視点が、制度として問われるようになっているのは、気になるところです。
WCAG3.0 と EAA を重ねて読むと
WCAG 3.0が成果(outcome)を問い、EAAが運用まで責任の範囲に含める。
ふたつの動きを重ねて読むと、「結果として何が実現されているか」を問う方向が見えてきます。
また、技術課題ではなく、プロセスの問題として捉えてみると、見えるものが少し変わってくる気配も WCAG 3.0 と EAA の動きから感じます。

例えば、プロセスに乗せて整理してみると、すべての課題に同じように対応するのではなく、「どのタイミングで、どのレベルまで対応するのか、ある種の優先軸を持って判断できるようになる」ということにもつながるように思います。
他にも、「アクセシビリティへの感度が高く、アプローチに詳しい人間がいる間はなんとか回るけれど、その人間が外れた途端に崩れていく」という側面も、防げるようになるのではないかと思っています。
以上、WCAG 3.0とEAAのふたつの動きを読んで、気になったことまで。